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 たがねやの由来

 わたくしども「たがねや」は、明治五年五月五日、桑名平賀在の濱吉が、桑名城下に平濱(平賀の平と濱吉の濱)の屋号で菓子屋を開業したのが起こりです。浜吉手焼の「たがね」の味もさることながら、それを紙袋に入れて売っていました。その頃として、三枚とか五枚の僅かな買い物を紙袋に入れて客に渡すことは、めずらしかったようです。やがて、平浜の「たがね」と廓の女たちに持て映されたということです。
 当代で五代目になります。屋号「たがねや」として今日に至っております。

たがねの由来

 古老たちは伝えています。「昔、桑名城下において、もち米とうるち米をまぜついた切り餅に時雨の溜り醤油をつけ、往来の旅人に売られたのが始まり。いつの頃か切り餅は煎餅になった」と。
 私どもでは、炭火で一枚一枚を店先で焼いた昔そのままに、今尚、焼き続けております。材料の厳選はいうに及ばず、形も古来の小判厚焼に加えて、更に日本酒・洋酒のおつまみにと薄焼のうえ櫛形もつくっていますが、ひなびた姿形、炭火焼の枯淡な風味は、心通う品として、高い評価を賜り、広く御進物などに御利用頂いております。

誌考註

 「たがね」は大槻文彦博士の「大言海」に、束(タガネ)の義、シトギ、シンコモチとあり、このうちシトギ(粢)と言うのは神前に供える餅の名で、上代には長卵形であったものが、後世楕円形になった(広辞苑)とあるが、それ以前は稲穂の刈束そのまま供物として神前に供えられた。古代の経済が、すべて稲の束数で量が計算されていたことなどから、束の義となったものともいえる。

後記

 ひなびた味、そこには私たちの遠い祖先の生活のかおりが漂います。ともすれば忘れがちな、ひなびの味を今に残すという想いは、生活をうけつぐ者の持つ一つの郷愁なのでしょう。
 私はこのささやかな仕事に、大きな意義とよろこびをもちつづけています

主人記
    
 
    
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